「ごはんのほうが体にいいって聞くし、パンはやめたほうがいいのかなあ……」

そう思いつつも、朝はやっぱりトーストが食べたい。お昼のパスタも好き。なのに夜になると「今日はお米にしておこう」と、ちょっと言い訳するように選んでいたりしませんか。

「お米と小麦、どっちが体にいいの?」と調べても、どちらにもいいところが書いてあって、結局どっちなの、ともやもやしますよね。

先に答えを言ってしまうと、今回いくつかの研究を確かめた範囲では、「健康にいいのはお米」「いや小麦」と一律に決められる根拠は見つかりませんでした。かといって、何を食べても同じというわけでもありません。研究を読んでいくと、「米か小麦か」だけでなく、次のような条件もあわせて確かめないと、比べたことにならなさそうでした。

  • 白いごはんか玄米か、白い食パンか全粒粉パンか、という食品の形と精製度
  • どれくらいの量を食べるか
  • 主食の横に何が並んでいるか

パンが好きな人は、パンをやめる前に、この3つもあわせて見てみませんか。ひとつずつ、いつもの食卓に引き寄せて見ていきます。

「ごはん対パン」のつもりで、別のものを比べているかも

たとえば、焼き鮭とお味噌汁に白いごはんの夜と、コンビニのメロンパンひとつで済ませた夜。前者のほうが体によさそうに感じますよね。でもこれは、お米と小麦の比べ合いというより、「おかずのある一食」と「主食だけの一食」の比べ合いです。

逆の組み合わせもあります。食パンに目玉焼きをのせて、トマトと牛乳を添えた朝と、おにぎりひとつをかじりながら家を出た朝。今度は小麦の日のほうがにぎやかです。

農林水産省の食事バランスガイドの料理区分でも、ごはん・パン・めんはまとめて「主食」。肉や魚、卵、大豆製品を使った主菜と、野菜やきのこ、海藻などの副菜を組み合わせて、食事全体を考える形になっています。主食の種類だけを見ても、その一食の中身は決まらないんですよね。

「体にいいのはどっち?」と気になったら、まず「いま私は、何と何を比べているんだろう」と考えてみてください。白ごはんと菓子パンなのか、白い食パンと全粒粉パンなのか。そこがはっきりするだけで、迷い方がずいぶん変わります。

おかずと炭水化物の量をそろえて食べ比べたら

では、おかずも炭水化物の量もそろえたら、お米と小麦はどう違うのでしょう。

北インドで行われた小さな研究では、健康な大人10人が、同じ豆の料理とオクラの料理を添えて、小麦の薄焼きパン(チャパティ)の食事と炊いたお米の食事をそれぞれ食べました。そろえたのは、食事全体に含まれる、食物繊維などを除いた「体で使われる炭水化物」の量です。食べた料理の重さを同じにしたわけではありません。この条件では、食後の血糖の上がり方に統計的な差は検出されませんでした(2020年の研究)。

ただ、これで「お米も小麦も同じ」と証明されたわけではありません。人数は少なく、測ったのは食後の短い時間だけ。食べる順番も入れ替えていません。食パンや日本のふだんのごはんを比べた研究ではないし、長い目で見た体重や病気のことも分かりません。

それでも、ひとつ持ち帰れることがあります。主食の名前だけで食事のよしあしを決めるのは、思っているより難しい、ということ。何を添えたか、炭水化物をどれだけとったかをそろえてやっと、主食どうしを比べる話になるんです。

「玄米がいい」は、お米の中の話

「でも、玄米は体にいいって言うよね?」。そう、ここはお米と小麦の勝ち負けとは別の話です。

白米と玄米の違いは、お米をどこまで削るか、つまり精製度の違い。白米・玄米と2型糖尿病の関係を調べた研究をまとめた2022年の報告では、長い期間追いかけた観察研究で、白米をよく食べる人たちでは発症が多く、玄米をよく食べる人たちでは少ない、という関連が見られました。

いっぽう、実際に白米を玄米に置き換えてみた試験をまとめると、空腹時の血糖などにはっきりした差は出ていません。しかもその試験の多くは数週間から数か月ほどで、病気になるかどうかまでを確かめたものではありませんでした。

観察研究で見られた関連は、「玄米に替えたからそうなった」という証明とは違います。玄米をよく食べる人は、ほかの暮らし方も違っているかもしれません。玄米の観察研究は対象になった地域や人も限られていて、そのまま日本の私たちに当てはまるとも限りません。

なので、白米を怖がる必要はありませんし、玄米に替えれば病気を防げると約束できるわけでもありません。「精製度という見方がある」と覚えておくくらいで十分です。

全粒粉パンの「腹持ち」と、実際に食べる量

小麦のほうにも、似た話があります。全粒粉パンは腹持ちがいい、と聞いたことはありませんか。

全粒穀物と精製した穀物で、食後の食欲や食べる量を比べた試験を集めた2021年のレビューがあります。調べたのは36の試験で、そのうち32の試験の数値をまとめて分析しています。扱われたのは主にライ麦と小麦で、多くは一食を食べたあとの短い試験です。

結果は、全粒穀物を食べたあとのほうが「お腹がすいた」と感じにくく、満腹感も高い傾向でした。ところが、そのあと実際に食べた量の差は、全体としてははっきりしませんでした。カロリーをそろえて比べた試験だけで見ると、満腹感の差がはっきりしない指標もあります。

「お腹がもつ気がする」と「実際に食べる量が減る」、さらに「体重が変わる」は、それぞれ別の話なんですね。全粒粉パンに替えれば確実に痩せる、とまでは言えません。味が好きなら、うれしい選択肢がひとつ増える。それくらいの距離感がちょうどいいと思います。

じゃあ、今日の主食はどう選ぶ?

ここまでをいつもの食卓に戻してみると、「お米か小麦か」の二択よりも、見るところが具体的になってきます。

主食だけで終わりそうな日を、先に見つける

いちばん手をつけやすいのは、たぶんここです。疲れた夜のパスタだけ、急ぐ朝の菓子パンだけ、お昼のおにぎりだけ。お米でも小麦でも、主食ひとつで終わる日はありますよね。

そんな日は、卵をひとつ、豆腐をひとパック、袋のサラダ、お湯を注ぐだけの味噌汁かスープ。どれかひとつ横に置けるかどうかで、一食の姿が変わります。パスタなら、ツナや冷凍ほうれん草を混ぜ込んでしまえば、お皿も増えません。

精製度は、替えやすいところだけ

玄米や全粒粉パンは、「全部替えなきゃ」と思うと、なかなか続きません。家族が白いごはん好きなら、ふだんは白米のままで。食パンを買うとき、たまに全粒粉のものを手に取ってみる。自分の分だけ玄米のパックごはんを置いてみる。好きな味をがまんして毎日がしんどくなるなら、本末転倒です。

量は「いつもの単位」で決めておく

茶碗に一杯、何枚切りのパンを何枚、麺なら一玉。単位を決めておくと、疲れてお腹ぺこぺこの日でもぶれにくくなります。ごはんを小分けで冷凍するときに一食分を決めておけるのは、地味に助かるところです。研究で使われた量は、あくまでその研究の条件。自分にちょうどいい量は、ふだんのお腹の具合と相談して決めて大丈夫です。

主食は家で、おかずは買う日も

ごはんを温める、パンを焼くまではできるけど、おかずまでは手が回らない。そんな夜は、主食だけ家で用意して、おかずは買ってきたり宅食に頼ったりする手もあります。主食付きの宅食にするか、おかずだけにするかは、宅食の選び方で考え方をまとめています。市販のおかずに何を足すか迷うときは、食事のキホンもどうぞ。

パンが好きなら、パンのままでいい

お米と小麦のどちらか一方を選べば正解、という話ではありませんでした。見たいのは、何と何を比べているか、精製度、量、そして横に何が並んでいるか。

朝のトーストをやめるより、トーストに何をのせるかをひとつ考えるほうが、ずっと続けやすいはずです。今夜ごはんにするなら、冷蔵庫から卵か豆腐をひとつ出してみる。それだけで、昨日とは少し違う一食になります。

なお、持病で食事の指示を受けている人や、アレルギーなどで避けている食品がある人は、主治医などからの個別の指示を優先してくださいね。

参考資料

  • 農林水産省「『何を』『どれだけ』材料と料理区分」(食事バランスガイド)
  • Shikha Nayar、SV Madhu「Glycemic Index of Wheat and Rice are Similar When Consumed as Part of a North Indian Mixed Meal」(Indian Journal of Endocrinology and Metabolism, 2020) DOI: 10.4103/ijem.IJEM_4_20
  • Jiayue Yu ほか「White rice, brown rice and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis」(BMJ Open, 2022) DOI: 10.1136/bmjopen-2022-065426 ※この研究自体への外部からの資金提供はありませんが、一部の著者に玄米の製造・流通への関与があることが開示されています。
  • Lisa M Sanders ほか「Effects of Whole Grain Intake, Compared with Refined Grain, on Appetite and Energy Intake: A Systematic Review and Meta-Analysis」(Advances in Nutrition, 2021) DOI: 10.1093/advances/nmaa178 ※食品企業General Millsの資金提供を受け、一部の著者が同社に所属しています。

この記事は、2026年10月31日に資料を確認して更新しました。