「えっ、もう22時……今から食べたら太るよなあ」
玄関で靴を脱ぎながら、そんなことを考える夜ってありますよね。
お腹はしっかりすいている。でも、遅い時間に食べるのはよくないと聞くし、何も食べずに寝るのもつらい。せめてご飯だけ抜く? それはそれで、布団の中でお腹が鳴りそうです。おまけに、こういう日に限って冷蔵庫の中はさみしかったりします。
「夜遅い夕食」の研究を読んでみると、「やっぱり太る」とも「気にしなくて大丈夫」とも言い切れませんでした。ただ、何と何を比べた研究なのかをほどいていくと、帰りが遅い夜に変えられそうなことと、今夜の自分を責めても仕方がないことが、少し分かれて見えてきます。
22時の夕食の実験、条件をよく見ると
いちばん「帰りが遅い夜」に近いのは、平均26歳の健康な成人20人が、18時の夕食と22時の夕食の両方を試した実験です。
この実験、ただ夕食を遅らせただけではありません。18時に夕食をとる日程では22時に軽食、22時に夕食をとる日程では18時に軽食。夕食と軽食を入れ替えた形で、一日に食べる量も栄養の割合も同じ、寝る時間も23時にそろえてあります。
それでも、22時に夕食をとったほうは、食後の血糖が高めで、食事からとった脂肪が燃やされる量も少なめでした。同じ量を食べても、時間が違うだけで食後の体の反応は変わる。ここは「時間なんて関係ない」とは言えないところです。
「ほら、やっぱり太るんだ」と言いたくなりますよね。でも、この実験で見たのは数日間の体の反応で、長期の体重ではありません。論文も、こうした変化が慢性的に続けば肥満につながるかもしれない、という書き方にとどめています。22時に食べたら来週の体重が増える、という結果とは別の話なんです。
もうひとつ、ふだん早く寝ている人ほど差がはっきり出ていました。ただ、20人の実験ですから、「自分は夜型だから平気」とまで読むのは早そうです。
遅い日に限ってお腹がすくのは、気のせい?
帰りが遅い日は、なんだかいつもより猛烈にお腹がすく。その感覚を考えるうえでは、3食すべてを4時間ほど後ろへずらした実験が参考になります。
過体重や肥満のある成人16人で、食事の量や栄養の割合、睡眠、活動をそろえて比べたところ、遅い日程では空腹感が強くなり、起きているあいだの消費エネルギーも低くなりました。
ただし、ずらしたのは夕食だけではなく、一日の食事ぜんぶです。朝も昼も押してしまった日には少し近いかもしれませんが、昼はふつうに食べて夕食だけ遅くなった夜とは、条件が違います。
それに、この実験では好きなだけ食べてもらったわけではありません。だから「お腹がすいて実際に食べすぎた」「体重が増えた」というところまでは確かめていないんです。消費エネルギーも24時間まるごと測ったものではないので、「夕食を早めれば毎日これだけ燃える」という話にもつながりません。
数か月の体重でみると、どうなの?
結局いちばん知りたいのは、ここですよね。
12週間以上の試験を集めたレビューには、29の試験、2485人の成人が含まれています。その分析では、カロリーを一日の早い時間に寄せた食べ方は、遅い時間に寄せた場合より体重の減少が平均1.75kg大きいと報告されました(95%信頼区間は−2.37〜−1.13kg)。
ここで「夕食を早めれば1.75kg」と読みたくなるのですが、ちょっと待ってください。
29試験の多くは、食べる時間帯を絞る方法や食事の回数を調べたもので、カロリーの配分を扱った試験は4件です。しかも「一日の前半に寄せる」と「夕食の時刻だけを早める」は同じではありません。食べる総量がそろえられていない試験もあるので、時間の影響と量の影響をきれいに分けることもできません。29件すべてで偏りのリスクに懸念があり、そのうち22件は懸念が高いと評価されました。証拠の確かさは低く、著者たちも、効果は小さく臨床的な重要性ははっきりしないと述べています。
3本を並べて言えるのは、このくらいです。食べる時間をずらすと、食後の反応や空腹感が変わることはある。数か月の体重では早めの配分に小さな差が見られるものの、確かなことは言いにくい。そして、「何時を過ぎたらアウト」という線は、どの研究からも引けません。22時も、実験で選ばれた時刻のひとつにすぎないんです。
ご飯を抜く、夕食を抜く、は別の問題です
迷いやすいのがここ。22時の実験が調べたのは、遅い時間に「きちんと一食を食べた」場合です。食べなかった場合との比較ではありません。どの食事も炭水化物・脂質・たんぱく質の割合はほぼ同じで、ご飯を減らすとどうなるかも見ていません。
だから、今回の研究から「遅い日は夕食を抜こう」「ご飯だけ抜こう」という答えは出てきません。お腹がすいたまま布団に入るのを勧める根拠も、ここにはないんです。ご飯やパンの量そのものが気になるときは、ダイエット中のご飯とパンの記事もあわせてどうぞ。
「でも、あの実験では18時に軽食を食べていたよね。夕方におにぎりを食べておけばいいのでは?」
そう考えたくなるのもわかります。ただ、比べたのは夕食と軽食の順番で、「分けて食べると得か」ではありません。分けて食べる効果は今回の資料では確かめていないので、効く方法としてはおすすめできないんです。それに、帰宅後の夕食がそのままなら、おにぎりの分だけ一日の量は増えてしまいます。もし試すなら、夜の一食のうち一部を前に回す、という足し算にならない形で考えたいところです。
動かせるのは、玄関を入ってからの時間
ここからは研究の結論ではなく、研究の条件をふまえた暮らしの工夫です。
帰る時刻は、自分では決められないことも多いですよね。でも、玄関を入ってから、冷蔵庫を開けて閉めて、出前のアプリを眺めて、結局お湯を沸かして……という時間は、けっこう伸び縮みします。22時に帰ったのに、食べ始めは23時。もったいないのは、この1時間かもしれません。
ねらいは、量を増やさず、段取りだけを前に寄せること。遅くなるとわかった時点で、帰りの電車の中で「今夜はあれを温める」と決めてしまうだけでも、玄関で止まる時間は減らせます。帰り道にお店へ寄るなら、買うのはその一食。疲れていると、かごにもう一品入れたくなるんですよね。わかります。
どこまで備えるかは、遅い夜の回数で変わります。
月に数回くらいなら、その夜のために大がかりな仕組みはいりません。迷いやすい分かれ道は、自炊したくない日の夕食の記事も手がかりになると思います。翌朝を抜いて帳尻を合わせようとするより、いつもの流れに戻すほうが、次の日もラクです。
週の半分以上が遅いなら、話は少し違います。毎晩その場で考えるのはさすがにしんどいので、冷凍庫に「温めるだけで一食になるもの」を置いておくと、決める手間ごと減らせます。昼や夕方の食べ方も含めて、一日の流れで見直す余地もありそうです。宅食を候補にするなら、宅食の選び方の記事で比べるところを確かめてみてください。これは遅い夕食の影響を減らせると確かめた方法ではなく、あくまで段取りの話です。
お腹がすきすぎて一気に食べてしまう夜が気になる人には、食べる速さと満足感の記事もあります。
体の事情があるときは、そちらが先
夜勤や交代勤務のある人、妊娠中の人、糖尿病などで治療中の人の暮らしに、今回の研究をそのまま当てはめることはできません。医師や管理栄養士から食事の指示を受けているなら、その内容を優先してください。
反対に、この記事のために血糖値を測ったり、食事の時刻を細かく記録したりする必要はありません。
22時の玄関で決めること
今夜の一食だけで、体重のゆくえまでは決まりません。研究からわかるのは、時間が体の反応に関わることもある、というところまでです。
だから玄関で決めるのは、案外ひとつだけ。袋を開けるか、温めるボタンを押すか、器を出すか。「太るかなあ」と悩んでいる時間のぶんだけ、夕食は遅くなっていきますから。
参考資料
資料の確認日:2026年11月1日。一般向けの情報で、個人の診断や食事指導に代わるものではありません。
- Gu C, et al.(2020). Metabolic Effects of Late Dinner in Healthy Volunteers—A Randomized Crossover Clinical Trial. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. https://doi.org/10.1210/clinem/dgaa354 /若い健康な成人20人の短期試験(各3日間)。長期の体重変化は調べておらず、妊娠中・糖尿病・交代勤務による睡眠障害のある人は対象外。資金はNIHと米国心臓協会。著者の開示事項なし。
- Vujović N, et al.(2022). Late isocaloric eating increases hunger, decreases energy expenditure, and modifies metabolic pathways in adults with overweight and obesity. Cell Metabolism. https://doi.org/10.1016/j.cmet.2022.09.007 /16人の短期試験。自由に食べた量と長期の体重は調べていない。糖尿病のある人、最近の交代勤務歴がある人は対象外で、朝食を習慣にしている人が対象。主な資金はNIHなどの公的研究費。著者に企業との講演料・顧問料の開示があり、著者らは本研究とは無関係としている。
- Liu HY, et al.(2024). Meal Timing and Anthropometric and Metabolic Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Network Open. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.42163 /29試験のうちカロリー配分の試験は4件。摂取量が処方・調整されていない試験を含み、証拠の確かさは低い。資金はオーストラリアNHMRC。利益相反の報告なし。資金提供者は研究の実施・発表に関与していないと報告。



